最終更新日: 2023/02/1
バーコード表示の意義
医療事故の多くが、ヒューマンエラー(人為的過失)に起因していることはよく知られています。 なかでも、医薬品の名前や外観の類似性に起因する事故が目立っています。
近年、医療事故防止と医療用医薬品のトレーサビリティ確保の観点から、「人の目」に頼ることからバーコードを活用したチェックシステムへ移行する本格的な取り組みが始まりました。
日本では2006年9月、厚生労働省より通知された「医療用医薬品へのバーコード表示の実施について」により、医薬品製造業者は2008年9月以降に出荷する製品について、新流通コード表示が義務化されることになりました。
厚労省の通知を受けて日本製薬団体連合会(日薬連)は、06年11月に「医療用医薬品新コード表示ガイドライン」を発表しました。 ここでは、その日薬連のバーコード表示ガイドラインの要点を紹介いたします。
医療用医薬品の種類と包装形態
日薬連のガイドラインにおける標準化の第1のポイントは、医療用医薬品を種類と包装形態に応じて分類したことです。
【医療用医薬品の種類】
- 特定生物由来製品:輸血用血液製剤・血液凝固因子・人血清アルブミンなど
- 生物由来製品(特定生物由来製品を除く):ワクチン・抗毒素・人工心臓・カテーテル・眼内レンズなど
- 内用薬、外用薬、注射液:特定生物由来製品及び生物由来製品を除く医薬品
【包装形態】
- 調剤包装単位(最小包装単位)
製造販売業者が製造販売する最小の包装単位(錠剤、カプセル剤であればPTPシートやバラ包装の瓶、注射剤であればアンプルやバイアルなど)
- 販売包装単位(最小注文単位)
卸売販売業者等から医療機関等に販売される単位(錠剤、カプセル剤であれば調剤包装単位であるPTPシートが100枚入りの箱、注射剤であれば10アンプル入りの箱など)
- 元梱包装単位
製造販売業者で販売包装単位を梱包した包装単位(販売包装単位である箱が10箱入った段ボール箱など)
従来、包装識別のためのJANコードは、パッケージ単位に付番されているので、同じ医薬品であっても幾つか異なったコードが発番されていました。
例えば、調剤においては10錠シート、14錠シート、21錠シート、バルク(瓶)などに付番されているJANコードは、わずかなパッケージの違いでも別コードとなるので、医療現場での管理が非常に複雑となっていました。 また、梱包でも包装形態によって異なった番号が付与されていました。
これらの矛盾点を解決するため新たな制度では、商品識別のためのGTINコード体系を利用することによって、パッケージインジケーター(PI)で包装形態が識別でき、アイテムコードを統一してトレーサビリティのためのデータベース構築が容易にできるようになりました。
詳細データの表示
第2のポイントは、医薬品の種類に応じて「商品コード(GTIN)」「有効期限」「製造番号」「数量」を、医薬品にバーコード表記することです。
- 商品コード
GTIN14桁を採用。PIは調剤包装単位が「0」、販売包装単位が「1」、元梱包装単位が「2」
- 有効期限
YY(西暦の下2桁)/MM(月の01~12の2桁)/DD(日付の2桁)で表示。日付不要の場合は「00」で表示
- 数量表示
数量は数字8桁以下で表示。8桁未満の場合は、先頭を「0」で埋めないで数値を表示
表記データの内容は、医薬品の種類と包装形態の組み合わせによって、それぞれ表示条件が個々に規定されています。
特定生物由来製品の調剤包装単位と販売包装単位は、商品コード・有効期限・製造番号の表示が必須で、数量は「1」なので表示する必要はありませんが、元梱包装単位は数量も表示する必要があります。
生物由来製品の調剤包装単位では、必須項目は商品コードのみで有効期限と製造番号は任意表示、数量は表示不要となっています。
また、内用薬、外用薬、注射液では、調剤包装単位と販売包装単位の商品コードのみが必須表示で、それ以外は任意表示か対象外となっています。
医薬品の表示シンボル
第3のポイントとしては、前記の詳細データの表示には「GS1データバー」「合成シンボル」及び「GS1-128」のバーコードを使用しなければならないことです。
合成シンボルとは、1次元シンボル(EAN・UPC・GS1-128など)の上段に2次元シンボル(PDF417またはMicroPDF417)を積み重ねたシンボルをいい、小物商品でかつ大量の明細情報の表示が必要な商品の識別用途に開発されています。
医薬品へのバーコード表示の方法は、包装形態によって次のように規定されています。
【調剤包装単位と販売包装単位】
- データ内容が商品コードのみの場合は、GS1データバーリミテッド(限定型)またはGS1データバースタック・オムニディレクショナル(標準2層型)で表示。
- 商品コード+有効期限・製造番号の場合は、GS1データバーリミテッド合成シンボルまたはGS1データバースタック・オムニディレクショナル合成シンボルで表示
【元梱包装単位】
- 商品コード・有効期限・製造番号・数量の情報をGS1-128で表示
この規格化によるGS1データバー及び合成シンボルの使用によって、医薬品や医療機材などの小物商品にも大量の情報を持つバーコード表示が可能となったのです。